GAIAの取り組みの中にみるDV防止につながる第一歩・更生保護法人がじゅまる沖縄DV加害者更生相談室研究員 名嘉知恵理

名嘉知恵理

『依存症は、DVとも関連の深い病気です』

~GAIAの取り組みの中にみるDV防止につながる第一歩~

更生保護法人がじゅまる沖縄DV加害者更生相談室研究員 名嘉知恵理

 

依存症という病気は、長い年月をかけてその人の性格や考え方、コミュニケーションの仕方までも変えてしまう性質があるため、一緒にいる人との間にトラブルが起きてしまいがちです。たとえ直接的な暴言を吐いたり、モノを投げつけたり、肉体的な暴力を振るったことがないような場合であっても、クスリを使って家の中にピリピリした空気を漂わせているということ自体が、一緒にいる人に傷つきや不安を与え、相手の生活を乱してしまいます。これらの言動は、依存症という病気によって作り出されたものではありますが、本来ならば最も安全で安心できる居場所であるはずの家庭からそれらを奪い、家族の平穏な生活を乱してしまっているという意味で、これは、家族にとってはDVの問題も「存在していた」ということになります。

しかし、依存物質や依存行為を停止させることだけに力を注ぎ、そのことから目を背けてしまうと、社会に出た後もDVの問題が残ってしまいます。そうなると家族の悩みは軽減されたことにはなりません。むしろ、それまでは「依存物質の使用」というベールに覆われて気づかなかったDVの問題が浮き彫りになってくるわけですから、家族の悲しみや傷つきは更に深くなってしまう可能性もあります。

また、DVが抱える「パワーとコントロール」「認知の仕方」などの問題に取り組んでいなければ、歪んだ認知の仕方が残ってしまいますから、その考え方に基づいて物事を解釈し、自分で自分の感情を掻き乱してしまいます。そして、自分の持っている様々な力を、自分自身や相手に安心や落ち着きを与えるために使うことよりも、相手をコントロールするために使うようにもなってしまう場合があります。そのため、家族だけでなく、職場や交友関係においてもトラブルが生じやすくなってしまい、その結果、大きなストレスや罪悪感等を抱えるようになり、再び依存物質の使用へと結びつくなど、悪循環に陥ってしまいがちです。

その点、琉球GAIAで取り組んでいる事柄の多くは、依存症からの回復だけでなく、DVからの更生にも役立っているという印象があります。

まず、GAIAでは、施設内のトイレや壁など、目につくところ(あるいは一人のなれる場所)に、相手との関係性の持ち方や自分自身の態度について気づきを促すための資料等を掲示し、依存症の問題だけでなくDVの問題にも気づいてもらうよう心掛けています。この「自分で気づく」という作業は、本人が自分自身のこれまでの態度を見直し、新しい言動を身につけていくための第一歩となっています。

また、GAIAでは、入寮者の名前を呼ぶ時には、「○○さん」という風に、丁寧な呼び方をしていますが、これは、相手への尊敬の気持ちを育むのに役立っていると思います。常に丁寧に扱ってもらうという経験を通して、親しい間柄であっても、また、仲が良い時だけでなくうまくいっていない時であっても、相手を丁寧に扱うことが大切であるということを学んでいることでしょう。

それから、GAIAでは、スタッフが仲間に対して叱責したり、感情的になったりせずに関わることを大切にしていますが、これも本当に大切なことだと思います。相手に良くない言動がみられた場合や相手が反発的な態度を示した場合、私たちは、ついつい反射的に、感情的でムキな言動をとってしまいがちですが、いくら「本人のため」あるいは「わかって欲しい」という想いが強いからといって、大声を出したり暴言を吐いてしまうと、それをされた人は、きっと、「相手を正すためにはそれが時には必要」「そうしなければ伝わらないんだから仕方ない(赦される)行為だ」ということを学んでしまうでしょう。回復していくにつれ、その時の自分があまり望ましくない言動をとっていたということを自覚するようになるわけですから、「あの時大声を出したり叱責してくれたおかげで今の自分の回復があるんだ」という風に勘違いしていまい、「むしろそのような言動をとったほうがいい。後々は相手のためになるんだ」と考えてしまうかもしれません。特に、スタッフのように先行く仲間は彼らにとって回復のモデルとなっているわけですから、「あの人もやっていたからOK。それが正解」という風に捉え、社会に出た後に同じことを率先してやってしまうかもしれません。そうなってしまうと、せっかく依存物質の使用が止まっても、周りの人とうまく人間関係を結べなくなり、孤立した寂しい人になってしまう可能性があります。

ですから、GAIAが暴力や暴言に対して許容的な考え方をせずに、非暴力的な言動を心掛けていることはとても良いことだと思います。怒りっぽい人からはあまり良いメッセージは届きませんが、落ち着いている人からは、たくさんのメッセージが伝わるので、人が近寄っていきたくなるような笑顔に溢れた人になっていくことでしょう。そして、今度は彼ら自身が、先行く仲間として、後からくる人が元気を取り戻せるような存在になることを心掛けていってくれることでしょう。回復の道のりで強要やコントロールを学ぶと、自分以外の他人の回復の道のりまでをも、何かとコントロールしたくなってしまうものですが、回復の道のりで尊重を学べば、相手のペースを大事にしながら、相手の心に寄り添える人へと成長していってくれるようになるかもしれません。日々の生活が平凡であっても、その中でさえも、喜びや楽しみ、幸せなどをきちんと感じられる力が育まれていくことでしょう。そして、社会に出た後は、きっと、「依存症者の回復モデル」となるだけにとどまらず、地域社会においても「人々や子ども達の健康的な生き方のモデル」となってくれることでしょう。

この地域社会における人々や子どもの達の健康的なモデルという点について、GAIAがどのような形で地域社会に貢献しているのか、その一部分を紹介したいと思います。

私は「更生保護法人がじゅまる沖縄」の中で、「DV加害者対策事業」に取り組んでおり、加害者の更生のための相談や講演活動・子ども達への予防教育等を行っています。その一環として、毎月1~2回開催しているDV防止について考えるワークショップ・講座の際には、琉球GAIAや沖縄ダルクなど依存症者の皆さんが、講座の受講も兼ねて、会場設営のボランティアをしてくれたり、ロールプレイの相手役等を務めてくれています。また、年に1回開催しているDV防止フォーラム等のイベント時には、実行委員会メンバーとして、数カ月前から意見を出し合い、様々なDV防止活動に取り組んでくれています。

薬物やアルコールへの依存によって社会的信用をなくし、職業も失い、友人や家族とも離れてしまい、「変わらない」と思われていたような人達が、自分達の抱える依存症の問題にだけ取り組むのではなく、DV防止活動にも積極的に参加しているわけですから、これらの催し物に訪れた人々は、本当に驚いた様子を見せることがあります。これは、私と依存症者の方々との間にある、お互いへの思いやりとフレンドシップによって続いている取組みであるため、沖縄県だけでしか行われていないことなので、一般県民の方々だけでなく、関係機関の方々でさえも、信じられないといった顔を見せることもあります。

しかし、その時に「今日一日」を真剣に生きている依存症者の姿を目の当たりにしたり、毎月少しずつ変化していく彼らの様子を見て、その顔は、心から彼らを称賛し、信用し、応援したい気持ちへと変わっていきます。どうやら彼らは、参加者の皆さんに、希望や力だけでなく、「変化」も与えてくれているようです。

この時に参加者の方々がくれる温かな拍手や笑顔が、彼らの勇気やエネルギーとなり、乱用を抑制し「回復し続ける力・生きる力」となってくれていますように…。そして、私達の友情がいつまでも続きますように…。

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