『リカバリーアイランドにかける夢』 社会医療法人 敬愛会ちばなクリニック 健康管理センター医長 清水隆裕

清水隆裕

『リカバリーアイランドにかける夢』

社会医療法人 敬愛会ちばなクリニック 健康管理センター医長 清水隆裕

GAIA機関誌・リカバリーアイランド沖縄をお読みの皆様、はじめまして。私は沖縄市知花にある「ちばなクリニック」の健康管理センターで人間ドック・健康診断を担当しながら、生活習慣病であれ悪性腫瘍(がん)であれ「早期発見」より「予防」が大事と、予防医療の普及に努めている医師です。

さて、皆様の中には、医師というと、教育熱心な両親のもとに生まれ、子どものころから勉強漬けで、有名進学校から医学部に進学したエリート……なんていう人物像を想像する人も多いかもしれません。確かに、私の身の回りにもそういうコースを歩んでこられたであろう方々はたくさんいます。では、私は?というと、残念ながら(?)そんな道を歩いてはきませんでした。

生まれは千葉県市原市、東京湾沿い京葉臨海工業地域に隣接した新興住宅地です。雨が降れば酸性雨、晴れたら光化学スモッグ、曇りの日には雲なのかスモッグなのかわからない……公害対策が進んだ今日ではかなり改善しているようですが、私はそんな環境の中で少年時代を過ごし、喘息に苦しめられていました。最寄り駅まで徒歩40分、バスは1時間に1本あるかないかという不便な場所に住んでいながら、自家用車もない。もちろんエアコンもありませんでした。

秋の始まるこの季節の思い出といえば、母の内職です。サンタクロースの目を縫い付けたり、紙のブーツを作ったり……それらがクリスマス前になるとお菓子を詰められてスーパーで山積みにされる。でも、我が家で作られたサンタクロースが、家に戻ってくることはありませんでした。日本全体が貧しかった時代ではありません、私が生まれたのは昭和48年です。同級生の家には普通に自家用車があり、すでにビデオデッキが普及している、そんな時代でした。

そんななか、父は一日に二箱のタバコを吸う重喫煙者でした。私にとって父は文字通り“煙たい存在”であると同時に、たまに一緒に出かけてもお菓子もジュースも買ってもくれずタバコだけは買う恨めしい存在でした。そしてそれに私が苦情を言おうものなら「オレが稼いだんだ、文句言うな」と一括されたものでした。

内職にいそしむ母でしたが、彼女自身は開業医の次女でした。実家の医院は叔父が継いでおり、その家には私と同年齢の従兄弟がいました。同じ祖父を持つ同級生なのに、我が家とのあまり違う生活に驚いた私は、医者になれば豊かな生活をおくれるものだと疑いませんでした。「お医者さんになるならたくさん勉強しないとね。」「いい学校に行かないとね。」そんな周りの大人たちの言葉に感化され、私立中学校に進みたがっていた私を阻んだのは、やはり経済事情でした。父は自分のタバコ代を私の進学に充てようとはしませんでした。私は、受験前に敗北したのです。

高校進学に際し、私は静かに反旗を翻しました。公立高校に進むように懇願する両親をしり目に、試験会場に向かわなかったのです。公立高校進学の道を断ち「滑り止め」と称して受験していた私立校への進学を果たしました。そこは、かつて私が進学をかなえられなかった中学校を傘下に持つ高校でした。その高校では国際教育の名目で海外留学を推奨していました。どうしても自宅から離れたかった私は学校の推薦をとりつけ、アメリカに本部を置く非営利団体から奨学金を得て、交換留学の名目で渡米しました。

留学先にフロリダ州が選ばれたのは偶然でした。喘息ゆえに水泳が好きだった私はスキューバダイビングを始めました。このことが、のちに、縁もゆかりもなかった沖縄へ移住する足がかりとなりました。ダイビング・インストラクター資格や潜水士免許を取得したことで経済的な自立に成功し、一方で、医師になる夢も持ち続けており、のちに琉球大学医学部へと進学することになったわけです。

こうして私自身の過去を振り返ってみると、生活環境を大きく変えることになった米国留学は非常に大きな転機でした。その後も順風満帆とはいきませんでしたが、なんとか人並みに生活できているのではないかと感じています。その経験から、私には、琉球GAIAの皆さんとともに実現したいことがあります。それはダイビング・スクールを開設し、回復のために沖縄に滞在される皆さんに、ダイビングの楽しさを味わってもらい、さらに希望される方には就業も可能な関連資格(インストラクターや潜水士)を取得できるようにサポートしていきたい、という夢です。ダイビングができるようになると、スクールを開くというほかにも、漁業や水中土木という仕事もありますし、華やかなところでは水中写真や動画を撮影するなどというマスコミ関係職にも道がひらけます。今すぐには難しいではありますが、何年かのうちには具体的に検討したいと考えています。皆様からもご要望やアイデアがあれば、ぜひお寄せください。すべてをかなえることはできないと思いますが、できることを一緒に探していきたいと思います。

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