「みんなが教えてくれたこと」・GAIA 上田 裕司

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「みんなが教えてくれたこと」

琉球GAIAスタッフ 上田 裕司

リカバリーアイランド沖縄の読者の皆様こんにちは。薬物依存症のユウジです。  僕は今、沖縄県にある薬物依存症リハビリセンター、琉球GAIA(以下ガイア)の事務所でこのメッセージを書いています。

6年前、僕は覚せい剤(以下クスリ)の乱用が止まらなくなり、薬物依存症を患いました。そしてあらゆるものを失った。誰とも交われず、一人ぼっちで、ただクスリを使い続けることしかできなくなった。

そして『なにか』を求め、ガイアにやってきました。

今日は僕が6年前『なにか』を求めてガイアへやってきた、その『なにか』について、お話ししたいと思います。

 

薬物依存によって、僕の住んでいた世界は爆弾が落ちたようにメチャクチャになりました。クスリを使い続けるために多くの人たちを傷つけ、そして自分自身もボロボロになった。何も聞こえず、何も見えない真っ暗な世界にクスリの存在だけが光り輝くそんな世界に迷い込みました。

現実世界では妻や子ども達が僕の帰りを待っている。両親や兄弟、友人も心配している。取引先への納品もある。月末は支払日だ。クスリの切れ目にはそうした当たり前の日常を必死に覗いてみる。しかし、ガッと首を絞められクスリだけが全てのあの世界に連れ戻される。そんな日々が何年も続きました。

 

ある日、家族から1冊のパンフレットを手渡されました。そこには『沖縄の大自然の中で仲間と共にクスリ抜きの新しい人生をはじめよう』と記されていた。僕は何も言わず食い入るように読みました。パンフレットの内容は沖縄の持つ明るいイメージと相まって不思議と心にすっと入ってきた。そして何もかもが無茶苦茶になってしまっているこの状態から抜けられるかもしれない・・・ ワラをも掴む思いでガイア行きを決めました。

ガイアへ着くと施設自体はごく普通の一軒家で不思議と落ち着いた。そして利用者の年齢層は幅広く、当時27歳だった僕は最年少だった。そして皆体格がよく真っ黒に日焼けして、話すととてもきさくな優しい人達の集まりだった。僕の思い描いていた更生施設のイメージ、薬物依存症者のイメージはすっかり的外れだった。     ガイアでの生活は慣れ親しんだ孤独から一転、にぎやかな毎日だった。皆で野球をしたり、サーフィンをしたり、シュノーケリングしたり、ウォーキングしたり、毎日汗を流しながら過ごした。料理作りも新鮮だった。些細なことでも褒めてくれて嬉しかった。執拗に誰かに命令されたり、叱責されたり、何かを強制される訳でもなく、あるのはクスリやお酒を飲まない・使わないといった必要最低限のルールと強い仲間意識でした。

施設内では同じ問題(薬物依存症)を抱えた他の人を『仲間』と呼び合あう。

僕はこれが受け入れられなかった。仲間ってなんだ? なぜ僕がこの人たちと同じなんだ? もう1週間はクスリを使っていない。体からも抜けているだろう。僕は正常だ。悪いが僕は重症じゃない。薬物依存症は過去のことだ。そう思っていた。

僕は『薬物依存症』という病気を自分に都合の良いように解釈していた。

そんなある日、当時、僕の担当スタッフだった草野卓也氏から『ユウジの今までの生き方の答えが、今君がガイアに居るという現実なんだ』と諭された。

思い返すと僕は今まで自分の人生において、過去を受け入れたことがあまりない。どうせ変えられるものでは無いし、過ぎた日のことに目を向ける必要は無いと考えていた。

過去の過ちや失敗、成功も時と共に忘れ去るもので、僕にとってはそれ以上でもそれ以下でもなかった。

しかし、過去の経験が今日の自分をつくり、今日の経験が未来の自分つくるという不変の原理がある。でも僕は過去を受け入れようとしなかった、すなわち僕は幻想の中で生きていた。

 

そう・・僕に必要だったのは、ありのままの過去を受け入れ、今日抱えている問題を素直に認め、助けを乞うことだった。そして仲間達と共にプログラムに取組み、性格上の欠点を手放していくことだった。

そしてなによりもこのシンプルな原理を教えてくれた『仲間』の中に居場所を持ち続けることだった。

 

それから6年という歳月が流れ、僕は変われた(気付けた)と思う。そしてこれからも変わり続けたい(成長し続けたい)と思っている。沖縄で過ごした6年という時間と仲間の存在はこれから続く僕の人生の礎石だと確信している。

 

幸せになるため必死に『なにか』を求めてきた・・・が、気が付くと何もかも失っていた。そんな辛い生き方はもうやめよう・・・

6年前『なにか』を求めてやってきた『なにか』とは・・・ 求めて得られる物ではなく、感じるもの、手渡していくものだと知った。幸せとはまさにそういうものだった。

 

今日も退屈で刺激のない、たわいない一日がすぎていく。僕が思い描いていた幸せな生活とは全く異なる平凡な昼下がり。ふと事務所の窓から庭に目をやると、ティーリーフの花に目が留まった。1年ほど前に若枝を挿し木したのがちゃんと根付いて花を咲かせていた。どうでもいい些細なことだが、それをみてカメラ片手に笑顔になった。それで幸せを感じたなら、紛れもなくそれは僕にとって幸せなことだ。小さくていいよ。それでいい。

 

このことに気付かせてくれたガイアの仲間達をはじめ、妻や子供達、家族の皆、そして僕たち家族を温かく支えてくれた沖縄の人達に心から感謝の意を添えて今日はペンを置きたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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